成約率アップ!自動車ディーラーが実践すべき効果的なフォローアップ術
- 錦一 織本
- 3月21日
- 読了時間: 11分
更新日:3月25日

目次
自動車ディーラーにとって、車両の販売はあくまで「スタート地点」であり、本当の意味での顧客満足は、その後のアフターサービスによって形成されます。特に現代では、顧客の価値観が「モノを所有する」から「体験に満足する」へとシフトしており、顧客対応の在り方にも大きな変化が求められています。
本記事では、アフターサービスの満足度向上を実現するための2つの重要なアプローチ──「プロアクティブフォロー」と「アクティブフォロー」について詳しく解説します。どちらも単なる点検や修理の提供にとどまらず、顧客との関係性を深め、リピートや紹介を生むための重要な戦略です。
1. なぜ今、アフターサービスが注目されているのか?
高額商材である「車」の購入は、信頼と安心の上に成り立つ
自動車は一般的な生活消費財とは異なり、数十万円から数百万円の高額な買い物です。それだけに、顧客は購入後のサポート体制に敏感であり、アフターサービスの内容や対応の丁寧さが、ディーラーに対する評価に直結します。
最近の消費者動向を見ると、車両本体の性能や価格だけではなく、「購入後も安心して任せられるか」が購入の決め手になるケースが増えています。その背景には、インターネットの普及による情報取得の容易さと、顧客のサービス品質に対する期待値の向上があります。
加えて、各メーカーが新車販売数の伸び悩みに直面する中、「顧客の囲い込み」「ライフタイムバリューの最大化」がキーワードとして浮上しています。これらを実現するためにも、アフターサービスはもはや「付属サービス」ではなく、「事業の柱」として再定義されつつあります。
2. アフターサービスがもたらす3つの経営メリット
① 顧客ロイヤルティの向上
継続的なフォローにより、「このディーラーなら安心」という感情が芽生えます。結果として、リピーター化や他者への紹介が期待でき、マーケティングコストの削減にも繋がります。
② 収益構造の多様化
新車販売に依存しない、メンテナンス・点検・部品販売による収益の確保が可能です。アフターサービスを通じて高収益体質へと転換を図ることができます。
③ ブランド価値の向上
口コミやSNS上での高評価レビューは、地域に根ざしたディーラーの評判形成に直結します。地域密着型の信頼性ある企業としてのポジション確立が期待されます。
3. プロアクティブフォローとは?──予防こそ最大の価値提供
顧客の「不安」や「迷い」を未然に解消する先回りのサービス
プロアクティブフォローとは、顧客が何かしらの不満や課題を感じる前に、それを予測し、先んじて対応するアプローチです。言い換えれば、「まだ起きていない問題に備える提案型サービス」と言えるでしょう。
プロアクティブな対応のメリット
顧客の不安やストレスを事前に取り除ける
問題が顕在化する前に介入できるため、トラブルを最小限に抑えられる
「気づかってくれている」と感じさせることで、信頼関係を構築できる
具体的な施策例
1.点検・車検リマインダー
•SMSやメール、アプリを通じて定期点検の案内を送信。
•顧客は「忘れていた」「助かった」と感じ、自然な来店動機になる。
2.走行距離や過去データを基にした提案
•走行距離が50,000kmを超えたらブレーキパッド交換の案内を送るなど。
•顧客ごとのデータに基づくパーソナライズドな対応が可能。
3.リコールや最新アップデートの迅速通知
•メーカーのリコール情報をリアルタイムで配信し、予約受付まで完結。
•安全性に関する取り組みで顧客満足度を大幅に向上。
4. アクティブフォローとは?──体験の満足度を“確認”し“深める”サービス
サービス後こそ、真価が問われる──顧客体験の「質」を最後まで追いかける
アクティブフォローは、点検や修理といったサービス提供後に行うフォローアップを指します。プロアクティブフォローが「未然の対応」であるのに対し、アクティブフォローは「事後の確認」であり、実際の顧客体験を測る重要な工程です。
顧客がサービスを受けたあと、「不満に思っていないか」「説明が不足していなかったか」「今後の改善点はないか」などを丁寧にヒアリングすることで、顧客自身もその対応の丁寧さに安心感を覚え、ブランドへの信頼が一層深まります。
アクティブフォローのメリット
顧客満足度の実態を定量・定性的に把握できる
不満やクレームの芽を早期に摘み取ることができる
顧客からのフィードバックを活かし、サービスの質を継続的に改善できる
アクティブフォローの実践方法
1.サービス後の満足度アンケート
•「今回の点検に満足していますか?」「スタッフの説明はわかりやすかったですか?」といった簡易な質問をメールやアプリで送信。
•回答率向上のためにインセンティブ(次回点検時の割引など)を設けるのも有効です。
2.フォローコールの実施
•高額整備や複雑な修理を行った顧客には、担当者が電話をかけてフォローアップ。
•「その後問題はございませんか?」といった声かけが、顧客に安心感を与えます。
3.修理・整備内容の明確な説明
•作業内容を口頭だけでなく、写真付きの報告書や動画で解説。
•専門用語を避け、誰でも理解できるよう工夫することで、顧客満足度を向上させると同時に、価格に対する納得感も生まれます。
5. フォローアップのタイミングと手段を最適化せよ
「いつ」「どのように」フォローするかが、顧客満足度を大きく左右する
フォローアップは内容だけでなく、タイミングと方法も極めて重要です。連絡が遅すぎると忘れられてしまい、早すぎると煩わしさを感じさせてしまいます。顧客ごとのライフスタイルやサービス内容に応じて、適切なタイミングとチャネルを選定することが鍵です。
フォローアップの最適なタイミング
車検・点検の直後:1~3日以内に連絡。余韻が残っているうちに確認することで、リアルな意見を収集できる。
新車納車後:1週間以内に「お困りのことはありませんか?」という一言で、不安を解消。
季節の変わり目:スタッドレスタイヤやエアコン点検の需要が高まる前に提案。
定期点検の1ヶ月前:スケジュール調整がしやすく、計画的な入庫に繋がる。
効果的なフォローアップ手段
電話:親近感を与える直接的なコミュニケーション。高額整備後などに有効。
メール・SMS:手軽かつ記録が残る。キャンペーン情報やリマインダーに最適。
モバイルアプリ:車両情報、メンテナンス履歴、次回点検の予定などを一元管理。デジタル世代の顧客に好評。
LINE公式アカウント:日常的なコミュニケーションツールを活用し、キャンペーンや点検予約を手軽に通知。
6. 顧客の期待を超えるコミュニケーション戦略
単なる対応から「感動体験」へ──“予想外の心配り”がロイヤリティを生む
現代の顧客はサービスを“比較”し、“評価”します。そこで重要なのが、「あたりまえ」の対応に加えて、「予想を超えたプラスアルファ」を提供することです。ちょっとした配慮や心づかいが、顧客の印象に強く残り、競合との差別化にも繋がります。
顧客満足を超えるための具体策
作業完了後の洗車サービス:整備後に車をピカピカにして納車。小さな感動が次回の来店に繋がります。
点検時のカフェスペースの充実:待ち時間を快適に過ごせる空間作り。無料Wi-Fiやドリンクの提供で顧客満足度が向上。
キッズスペースの設置:ファミリー層への配慮は、信頼獲得に直結します。
透明性のあるコミュニケーションで信頼を育む
作業前に見積を提示し、費用や作業内容を事前説明。
不明点があればすぐに確認し、曖昧さを残さない対応。
「お客様の了承なく追加料金が発生することはありません」と明言し、不安を取り除く。
7. 実際の成功事例に学ぶ──アフターサービスで差をつけた地域ディーラーの取り組み
事例①:定期リマインド×パーソナライズ提案でリピート率向上(関東圏A社)
A社では、顧客の点検スケジュールに合わせて、1ヶ月前にSMSで通知。さらに走行距離に基づき「そろそろエンジンオイル交換の時期ですね」といった個別メッセージを送信しています。結果として点検予約率が前年比20%増、来店顧客の75%が継続利用を希望するなど、大きな成果を上げています。
事例②:整備後フォローコールとアンケートで顧客満足度95%超(関西圏B社)
B社では、整備完了後3日以内にサービススタッフがフォローコールを実施。「異音はなくなりましたか?」「気になる点はありませんか?」とヒアリングを行い、内容をデータ化。集まった声をもとに業務改善を図り、CS(顧客満足度)スコアが1年で80→95へ上昇しました。
8. メカニックにも求められる“伝える力”──専門用語を使わない説明が信頼につながる
「説明がわからない」は顧客不満の原因に
整備士やサービススタッフは、日々専門的な知識と技術を駆使して車両を整備しています。しかし、顧客は必ずしも車の仕組みや整備内容を理解しているわけではありません。そのため、どれほど高い技術を発揮していても、「何をされたのかよく分からなかった」と感じさせてしまえば、満足度は低下してしまいます。
「オルタネーターの出力が不安定で…」
「タイロッドエンドのガタつきが…」
こうした専門用語は整備士にとっては日常語でも、顧客にとってはまるで異国語。そこで重要になるのが、“専門用語を使わずに伝える力”です。
ロールプレイング(ロープレ)がCS向上に効果的
メカニックといえども、顧客と接する機会がある限り、基本的な接客スキルは必要不可欠です。最近では、ディーラー内部で「ロープレ(ロールプレイング)」を導入するケースが増えており、メカニック自身が「顧客にどのようにわかりやすく説明するか」をトレーニングする動きが活発になっています。
ロープレ導入のメリット
•自分の説明の癖やわかりづらい部分を客観的に認識できる
•顧客が抱きやすい質問への事前対策ができる
•接客に対する苦手意識を払拭できる
•顧客との会話で生まれる「安心感」や「信頼感」を育てるきっかけになる
ロープレの具体例
【想定シーン】:車検後、お客様への作業内容報告
【改善前】:
「今回、下回りのアームに若干のガタが見受けられましたので、タイロッドエンドのブーツ交換とグリスアップを実施しました。」
【改善後】:
「車のハンドル部分に関わる部品が少し緩くなっていたため、安全のためにゴム製のカバーを新しいものに交換し、滑らかに動くように潤滑剤を注入しました。」
このように、専門用語を“かみ砕いて”説明するスキルは、顧客にとっての安心材料となり、信頼の蓄積に繋がります。
コミュニケーションの質がCSを左右する時代
従来は「整備はサービスフロントが説明するもの」とされていましたが、今はメカニック自身が説明に出るディーラーも増えており、「整備士=技術者+接客者」という新しい立ち位置が求められています。
そのため、定期的な接客研修や説明ロープレを全社で実施することで、組織全体の顧客対応力を底上げすることができます。接客スキルは、営業やフロントだけのものではありません。技術職であっても、顧客視点を持つことで、より満足度の高いサービスが提供できるのです。
まとめ──フォローアップの質が“次の購入”を決定づける
自動車ディーラーにとって、アフターサービスは単なる「義務」ではなく、顧客と長く付き合うための「最大の武器」です。
プロアクティブフォローによって顧客の不安を先回りして解消し、アクティブフォローでサービス後の不満や疑問を丁寧に拾い上げる。この2つを組み合わせることで、顧客に安心感と信頼を提供し、結果として再来店やリピーター獲得に繋がります。
さらに、適切なタイミングで、最適な手段を使ってフォローアップを行い、透明性のあるコミュニケーションとプラスアルファの心づかいを加えることで、「このディーラーにまたお願いしたい」と感じてもらえる関係性を築くことができます。
今後、EV化やサブスクリプション型の車両サービスが進む中で、ディーラーが担う役割はより複雑になります。その中でも変わらず重要なのが「人と人との関係性」です。だからこそ、今このタイミングでアフターサービスの質を高める取り組みを始めることが、未来の成長へとつながる第一歩になるでしょう
アフターサービスの質を高め、選ばれるディーラーへ──今こそ“顧客視点”の取り組みを始めませんか?
お客様との信頼関係は、一朝一夕で築けるものではありません。しかし、日々の丁寧なフォローや、わかりやすく誠実なコミュニケーションを積み重ねることで、確実にその関係性は深まっていきます。
アフターサービスの強化に向けて、「何から手を付ければよいか分からない」「社内の意識をどう変えていけばいいか不安」と感じる企業様も少なくありません。当社では、こうしたお悩みに対して“現場に根ざした改善”と“持続可能な仕組みづくり”をご支援しております。
•プロアクティブ/アクティブフォローの運用設計
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